はじめに ― 子供たちと環境をつなぐ架け橋として
1991年に誕生した「地球こどもクラブ」。
小中学生を対象に作文やポスターを通じて環境意識を育む活動を続け、これまでに延べ数万人の子供たちが参加してきました。
今回は専務理事の井田敏夫さん、理事の岡崎友紀さん、副会長の加瀨敏雄さんに、クラブ設立の経緯や参加のきっかけ、そして未来への展望について語っていただきました。
設立の原点 ― 作文3380通から始まった大きな流れ

井田:
1991年、環境庁(当時)の20周年を記念した作文募集が、クラブ設立の出発点でした。予想を大きく上回る3380通もの応募があり、これは「一過性のイベントで終わらせるべきではない」と感じました。
そこで学術界や経済界の著名人に呼びかけ、組織としての「地球こどもクラブ」を立ち上げたのです。さらには1995年に、高円宮殿下にご臨席いただき、小学生、中学生、作文・ポスターに高円宮賞という形で賞を授与いただける運びになりまして。加えて、内閣総理大臣賞、外務大臣賞、文部科学大臣賞、環境大臣賞という形で賞を設けることができております。
以来、子供たちに環境の大切さを伝える場、環境問題に対して真剣に取り組む場として活動を継続してきました。
女優・岡崎友紀さんが理事に参加した理由

岡崎:
私は、10代の頃から自然環境保護や動物愛護の活動に参加してきました。戸川幸夫先生や、藤原英司先生といった“レジェンド”の先生方の背中を見て、環境活動の大切さを強く学びました。
その後、劇団の舞台で「1万5千個の空き缶を使った舞台セット」を制作し、新聞にも大きく取り上げられました。サンタクロースが、プレゼントではなく「廃品回収」に来るという皮肉を込めた作品で(笑)。この舞台をきっかけに井田さんと出会い、理事に加わることになりました。
病気で活動を休んだ時期もありましたが、手術を経て復帰。今は「これからは地球こどもクラブのために全力を尽くす」と心に決めています。
企業の立場から ― 加瀨副会長と「早生桐」プロジェクト

加瀨:
早生桐という、一般的な樹木は成長するのに2~30年かかるところを5、6年で成木のなるという桐があります。弊社の事業は、どうしてもCO2を大量に排出してしまう側面があるものですから、これは何とかしなければいけないということで、その早生桐の事業を始めました。
実際に自社で植樹をしているのですが、弊社の排出CO2の量を見ますと、もっと広範囲に早生桐事業を行わなければいけない、そしてこの活動自体を広めなければならないなと思っていたんですね。そこでちょうど5年ほど前に、地球こどもクラブの存在を知りまして。現在、地球こどもクラブは発足から34年を迎えますが、発足当初から、桜の木を中心とする植樹を行なっている聞き、これだ!と。弊社の早生桐事業と非常に親和性が高かったところから、活動に関わるようになりました。
環境問題は企業にとっても無視できません。サプライチェーンの基準に環境配慮が盛り込まれる中で、企業が動かなければ取り残されてしまう時代です。だからこそ、地球こどもクラブと共に歩む意義を強く感じています。
子供たちの未来に責任を持つということ
井田:
設立当初は「子どもに環境を教える意味があるのか?」と批判されることもありました。しかし今や気候変動は、現実の危機です。夏には40度を超える日が続き、地球温暖化は誰もが実感する課題になっていますよね。だからこそ、子供たちに伝え続けることが不可欠なのじゃないかなと思っているのです。

岡崎:
30年以上もこの会をやってる、さらには、その前から何十年も環境問題に関する活動をやっているのに、年を取れば取るほど、何も変わっていないのでは、と思うことが多すぎて。命に関すること、地球に関すること、教育に関することなど、本当に大事なことが、どこかへ置き去りになっているような感覚を持っています。便利なものや、新しく素晴らしい技術はどんどん先へと進んでいきますが、その反動で生み出される負の遺産を取り巻く状況は、ずっと進展を見せないところに、すごく責任を感じています。だからこの会が、何か先に光を生み出すようなものを、小学生や中学生のみなさんの心の中に植えていければいいなというふうに感じています。
井田:
日進月歩で、環境問題がどんどん変わりつつあるということですからね。それも悪い方向に。ですが、その中で「何を未来に残すのか」を子供たちに伝えることこそ、私たち大人の責任です。
岡崎:
子供たちの顔を見ると、「この子たちの未来に責任がある」と胸が痛くなるほど感じるんですよね。だからこそ、諦めずに言い続けることが大切だと思うんです。ただし、大人が「こうあるべき」と押しつけるのではなく、子供たちが未来をどう描くかを大事にしたい。その思いを受け止める場として、地球こどもクラブが存在することに意味があると感じています。
井田:
また、地球こどもクラブの作文・ポスターコンクールは、子供たちの思いを、大人が真剣に受け止める場でもあります。設けられている各賞は、日本でも他にないし、世界でも類を見ないものですから、これを企業・団体の皆様に有効活用していただけるとありがたいです。
加瀨:
世界は2050年のカーボンニュートラルを目指しています。企業も、個人も、そして子供たちも「自分に何ができるのか」を考える時代です。地球こどもクラブは、日々変化する問題に対して、常に環境問題を発信できるような会にしたい。
「地球こどもクラブを見れば未来のヒントがある」――そんな存在を目指し続けたいですね。




